リザ、あお薄紅の花を覚えている?
長い長い戦が、それこそ永遠に続くかの様な闇が、ようやく終わった。 十年もの長い歳月、何時果てるかも分からない命がこの身体から逃げぬように、ただ必死に。 苦しみと悲しみの波に揺られながら、だからこそ。 狂おしく望んだ、僕の光。
業火が大地を飲み込み、全てに振るわれた悪魔の力を前に人は成す術無く、僕は無力に。 全てに絶望した時も、不思議と思い出す君は汚れを知らずに笑っていた。 記憶にある君は幼く、別れた日は遠く彼方の事なのに。
心が廃れ、闇に身を浸した瞬間も。 思い出すのは君ばかり。
どんな時も君は、笑っているのだろう。 それは確信であり、願いだった。
憧憬や懐かしさがそう思わせたのかもしれないけれど、それでもその希望が僕を立ち上がらせ、骸の上を歩かせた。
君は僕の、光。
長い夜が明けたら、僕は君と言う太陽を求めて旅に出ようと思っていた。 柔らかい朝を迎え、大人になった僕が君を目指す。
伝えたい事は無限。 伝えたい想いは募る。 君を前に僕はきっと、気持ちの半分も言葉に出来ないだろうけど、君はきっと昔の様に、何もかも見透かした瞳で微笑みながら聞いてくれるのだろう。
あの薄紅の花は、今も湖上に美しく花開いているよ。 |