世界の片隅で

滅び行く世界を　必死に繋ぎとめようと　彼は　自身がボロボロになる事など見向きもせずに　ただひたすら　滅び行く世界を　修復しようと それを見て　僕等は　一度 「愚かだ」 と目を逸らし　背を向けた それでも彼は　滅びいく世界を　ただひたすら ある時　緑芽吹き　僕等は彼の偉業を知る それでも僕等は己から　動き出す勇気を持たない 彼は一人　孤独に　滅びいく世界を繋ぎとめようと 彼の体はボロボロで　視力を失い　聴力を失い 何も見えない聞こえない　ボロ布のような　様相で　それでも 彼は何時も　何度も裏切られ　何度も奪われ　何度も失いながら 彼はそれでも それでも 誰かの為に　何かの為に　何時も何時も　己を犠牲にしてきた 「もう　いいよ」 「もう　十分だよ」 「もう　立ち上がらなくていいんだよ」 そう　言っても　彼の耳にはもう　届かなくて 世界の片隅で　世界の広さを知らずに　世界の片隅で　修復は追いつかずに 彼自身を飲み込もうと　滅び続けている 「もう　いいんだよ」 世界の片隅で　今日なお眠る事をしない　彼に 僕は　涙で視界を揺らす

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