王様

とある国の王様は　若く　美しく　爽やかに微笑む姿は　泰然と 民衆は　王様の虜。 羨望の的。 しかし　王様は傀儡で　王宮では　居場所を持たない。 王様は　厳重で檻の様な宝物庫の暗がりに腰を下ろし　誰にも探されないまま　時間を過ごす。 幾重にも積まれた　金銀宝石を慣れた手つきで掻き分けながら　王様は　バラットの束を迷い無く抱き留めた。 ランプの灯りが壁を照らし　王様の影を形作る。 それは　バラットに描かれる　勇猛な　王の立ち姿を　そのまま引き伸ばしたかのように――。 黒と　白の　魔法使いを従えて　雄々しい　三人の騎士に　跪かれながら　剣を　天空に突き出し　勝利を謳う。 血の味を知らぬ　飾り細工の細剣を　天井へと向けて　王様は　あらゆる欲をねじ伏せた。

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